アストレイ: 2006年5月アーカイブ

「無印」5話&「R」7話

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2つのコミックは、基本的に違うエピソードを扱うようにしていた。 だが、物語上、どうしても重要なものは、両誌で扱わざるを得ない。 これまで1話の一部だけが、共通だったが、 このエピソードでは、まるごと同じ話を書いている。(細部は違う) 理由は、両誌ともに「どうやって地上に降りたのか」を説明する必要があったからだ。 ※実はゴールドフレームに関しては、「R」では重要視していなかった。  敵として、ルキーニがすでに存在していたからだ。 ・ときた版(無印) 冒頭、ルキーニと劾のシーンで始まる。 ルキーニが、はっきりと登場するのは、これが最初だ。 (これまでも、ちらちらは出てた) このキャラに興味をもってもらえれば、ガンダムエースの読者に少年エースを読んでもらえるかもしれないと、考えてのシーンだ。 なぜ、劾に会いに来たかは、少年エースを読むと分かる。 ・両誌 ロウが、ゴールドフレームの存在にニュータイプ的感覚で気づくシーン。 実は、ロウの初期設定には「メカに関してはニュータイプ的直感力が働く」という記述があり、それを生かした。 少し微妙な問題もあるので、シナリオに盛り込む前にサンライズに確認をとった。 「これぐらいなら、アリでしょう」という返事でオッケーに。 ・両誌 ゴールドフレームが装備しているのは、デュエルのバズーカだ。 実はサンライズから連絡があり、 「初期設定のみで本編で使用する機会のないデュエルのバズーカが、おもちゃに付属することになった。アストレイで出してくれないか?」 とのことだった。 そこで、へリオポリス崩壊時に、ゴールドがデュエル用の装備を持ち出したことにした。(このエピソードはのちに電撃で詳しく描くことになる) ・戸田版(R) ガンダムエースでは、なぜゴールドに襲われたのか、その理由がない。 戸田版では、「ザフト基地へコロニーの外壁を落とし、その間に自分が地上へ降りるため」という説明が出てくる。 理由がないガンダムエースは、まずルキーニが「何かある」と話題をふるので成立している。また、これ以後、ゴールドとの因縁が深まり、そこで対立関係が見えてくることで、この段階での具体的な理由がなくても成立するようにしている。 コロニーの外壁のデザインは、戸田先生が担当した。 戸田先生は、これに凝りすぎて、原稿の作業が遅れてしまうことになった。 「ときた先生も使う設定だから」というのが、まじめな戸田先生らしい理由だ。 ・両誌 ホームのクレーンで、ゴールドを殴るのは、私がせひやりたかったシーン。 世にも珍しい宇宙船による格闘戦のシーンだ。 最後に「ホームはこんなことも出来るよ」と、読者に教えたかったのだ。 実は、戸田版では、このシーンはスペースの都合で、カットになりそうだったが、 なんとか入れ込むことが出来た。 ・両誌 最後の1ページは、両誌ともに「朝日」「レッドフレーム」「ロウ」という共通のイメージで書いてもらっている。 見比べると、両誌の作品の違いを、読み取ることが出来ておもしろい。

少年エース「R」6話

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いきなり「海鮮ジョンゴル鍋」ですよ。 もちろん、シナリオにはありません。 戸田さんのアイデアです。 もうこのころになると、戸田流のノリが、私にとって快感だったので、スルーしました。読者も、同じように喜んでいてくれることを願いつつ。 まさか、引いてませんでしたよね? ※ちなみに、この鍋については、 ちゃんとサンライズに確認して了承とってます。 さすがに食物資源のとぼしいプラントで「海鮮」なので。 この話の基本は、「名所めぐり」だ。 外伝であるアストレイシリーズは、なるべく本編に登場した名所をめぐるようにしていた。 そうすることで、世界観が共通であることが明確になりやすい。 今回は、「本当の名所」だが、「事件があった場所」なども、名所として考えていいだろう。 そう考えると、ときた版でキラを助ける所は、究極の名所と言える。 今回は、ナチュラルのロウたちが、 プラントの中に入るというウルトラCな名所巡りだ。 もともと、「エヴィデンス01は、プラント内では、観光地になっている」。 というサンライズから聞いた設定を描くために書いたシナリオだ。 シナリオ段階では、01の周りにおみやげモノ屋の屋台などが出ている風に書いたが(それが戸田風かと思ってそうした)、戸田先生に否定されてなくなってしまった。 まだ、このころは戸田流がよく分かってなかったという一例だ。 ファーストコーディネイターのジョージ・グレンを崇拝する「GG友の会」は、プロットでは、宗教団体として描かれていた。 だが、作品に宗教を持ち込まないというガンダムの基本方針があり、 「友の会」に落ち着くこととなった。 それにしても戸田先生の描かれたモンドのデザインには、びっくりした。 頭にGGと入れ墨している。 かなりのインパクトだ。 ロウがテロリストを殴るシーンの作画は、演出として、ああなっているのだが、読者にそれが伝わるのか、微妙な所だ。 伝わってます? モビルスーツによる戦闘は、具体的に描かず、イメージシーンと、ナレーションによる処理になっている。 これも戸田先生からの要望だった。 ここでは、先に殴るシーンがあるので、後の戦闘は細かく描く必要はないという考えだ。 「GG友の会」の秘宝「GGユニット」は、 ときた版にも登場する。 デザインは、戸田先生に先行して進めてもらい、ときた版で合わせた。 次回は、大気圏突入&ゴールドとの戦い。 これは、ときた版とまったく同じ話が、はじめて出てくる実験作になる。 (1話をのぞく) ときた版と比較しながら、紹介したいと思う。

少年エース「R」5話

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「R」で、もっとも気に入っている話。 もともとは、戸田先生から 「ロウというキャラを描くために、 普通の人とは違う価値観を示す話が欲しい。 たとえば、何かを得るためにブラックホールに飛び込んでしまう話」 というオーダーを受けたのが、きっかけ。 さすがにブラックホールに入ったらロウでも戻ってこれないので、 爆発寸前の施設に、ただのデータを取りに行く話となった。 この普通の人にとっては、「ただのデータ」が、 ロウの考えでは「その人の思いがこもった唯一無二のもの」 となっている所がポイント。 ロウは、「モノが持つ使命」を大切にしようとしている。 すべてのモノは、換えがきかない。 だから、彼は、個を極限まで大切にするジャンク屋なのだ。 それを明確化するためには、最初に「人間に対して冷たい」ともとれる対応をさせ、 実は「モノ」と「人間」、どちらの使命も、同等に扱っていることを明かして、ロウというキャラの考えを示している。 この話では、敵は、特殊な存在にならないように、 ルキーニにそそのかされた女性ハーナが出てくる。 (普通の敵というのが、敵としては特殊だが) 普通の人が敵となった時、よりロウの行動が明確化する。 ハーナの名前は「花」からとっている。 当時、好きだった女優さんが自殺してしまった。 その人の私が好きだった役名からとった。 最初にザフトが実験しているのは、 モビルスーツ用の大出力ビームの実験。 おそらく、Nジャマーキャンセラーに関係している。 シナリオ段階で、どんな実験が可能なのかを、ぬえ森田さんと話してきめた。 ただ、この段階では、森田さんにも明確にキャンセラーのビジョンはなかった。 プロフェッサーが、駄菓子の「ねるね」を食べている。 「なぜ、ねるねを?」 と戸田先生に聞いたら「気づいてくれましたか? わざとやってみました」 との返事。 よく理由は分からなかったが、まあ戸田版の雰囲気ということで了承。 以後も、同様の「ひっかかり」のあるアイテムが画面に出てくることとなる。 ラストシーンで、爆発の中に現れるレッドフレームは、 8が操縦している。 8の操縦は、オート(人を介さない)ということで、 世界観的な問題をはらむのだが、 「単純に歩いてきただけ」ということで、 サンライズのチェックをパスした。 ※ときた版の1話でも、8がライフルを撃つシーンがある。 フルオートは問題だが、単純な作業なら、現代のテクノロジーでも簡単に出来る。 逆にコズミックイラの時代にそれが、出来ない方がおかしなことになる。 ただ、どこまでがよくて、どこまでダメなのかは、理屈ではなく、世界観の話になる。 ここの見極めを間違えると、読者が混乱することとなってしまう。 この話は、冒頭に書いたように、私の大のお気に入りだ。 だが、アンケートの順位はさんざんだった。 まあ、ロボットが活躍しないのだから、しょうがない。 (ときた版3話と同様の現象だ。作者の気持ちとアンケートは一致しない) この話が少年エースに掲載された後、 ときた先生から「いい話でした」と言って頂けたのが、とてもうれしかった。

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