少年エース「R」5話

|
「R」で、もっとも気に入っている話。 もともとは、戸田先生から 「ロウというキャラを描くために、 普通の人とは違う価値観を示す話が欲しい。 たとえば、何かを得るためにブラックホールに飛び込んでしまう話」 というオーダーを受けたのが、きっかけ。 さすがにブラックホールに入ったらロウでも戻ってこれないので、 爆発寸前の施設に、ただのデータを取りに行く話となった。 この普通の人にとっては、「ただのデータ」が、 ロウの考えでは「その人の思いがこもった唯一無二のもの」 となっている所がポイント。 ロウは、「モノが持つ使命」を大切にしようとしている。 すべてのモノは、換えがきかない。 だから、彼は、個を極限まで大切にするジャンク屋なのだ。 それを明確化するためには、最初に「人間に対して冷たい」ともとれる対応をさせ、 実は「モノ」と「人間」、どちらの使命も、同等に扱っていることを明かして、ロウというキャラの考えを示している。 この話では、敵は、特殊な存在にならないように、 ルキーニにそそのかされた女性ハーナが出てくる。 (普通の敵というのが、敵としては特殊だが) 普通の人が敵となった時、よりロウの行動が明確化する。 ハーナの名前は「花」からとっている。 当時、好きだった女優さんが自殺してしまった。 その人の私が好きだった役名からとった。 最初にザフトが実験しているのは、 モビルスーツ用の大出力ビームの実験。 おそらく、Nジャマーキャンセラーに関係している。 シナリオ段階で、どんな実験が可能なのかを、ぬえ森田さんと話してきめた。 ただ、この段階では、森田さんにも明確にキャンセラーのビジョンはなかった。 プロフェッサーが、駄菓子の「ねるね」を食べている。 「なぜ、ねるねを?」 と戸田先生に聞いたら「気づいてくれましたか? わざとやってみました」 との返事。 よく理由は分からなかったが、まあ戸田版の雰囲気ということで了承。 以後も、同様の「ひっかかり」のあるアイテムが画面に出てくることとなる。 ラストシーンで、爆発の中に現れるレッドフレームは、 8が操縦している。 8の操縦は、オート(人を介さない)ということで、 世界観的な問題をはらむのだが、 「単純に歩いてきただけ」ということで、 サンライズのチェックをパスした。 ※ときた版の1話でも、8がライフルを撃つシーンがある。 フルオートは問題だが、単純な作業なら、現代のテクノロジーでも簡単に出来る。 逆にコズミックイラの時代にそれが、出来ない方がおかしなことになる。 ただ、どこまでがよくて、どこまでダメなのかは、理屈ではなく、世界観の話になる。 ここの見極めを間違えると、読者が混乱することとなってしまう。 この話は、冒頭に書いたように、私の大のお気に入りだ。 だが、アンケートの順位はさんざんだった。 まあ、ロボットが活躍しないのだから、しょうがない。 (ときた版3話と同様の現象だ。作者の気持ちとアンケートは一致しない) この話が少年エースに掲載された後、 ときた先生から「いい話でした」と言って頂けたのが、とてもうれしかった。

このブログ記事について

このページは、千葉智宏が2006年5月 1日 23:42に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ガンダムエース(無印)4話」です。

次のブログ記事は「少年エース「R」6話」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。