「R」で、もっとも気に入っている話。
もともとは、戸田先生から
「ロウというキャラを描くために、
普通の人とは違う価値観を示す話が欲しい。
たとえば、何かを得るためにブラックホールに飛び込んでしまう話」
というオーダーを受けたのが、きっかけ。
さすがにブラックホールに入ったらロウでも戻ってこれないので、
爆発寸前の施設に、ただのデータを取りに行く話となった。
この普通の人にとっては、「ただのデータ」が、
ロウの考えでは「その人の思いがこもった唯一無二のもの」
となっている所がポイント。
ロウは、「モノが持つ使命」を大切にしようとしている。
すべてのモノは、換えがきかない。
だから、彼は、個を極限まで大切にするジャンク屋なのだ。
それを明確化するためには、最初に「人間に対して冷たい」ともとれる対応をさせ、
実は「モノ」と「人間」、どちらの使命も、同等に扱っていることを明かして、ロウというキャラの考えを示している。
この話では、敵は、特殊な存在にならないように、
ルキーニにそそのかされた女性ハーナが出てくる。
(普通の敵というのが、敵としては特殊だが)
普通の人が敵となった時、よりロウの行動が明確化する。
ハーナの名前は「花」からとっている。
当時、好きだった女優さんが自殺してしまった。
その人の私が好きだった役名からとった。
最初にザフトが実験しているのは、
モビルスーツ用の大出力ビームの実験。
おそらく、Nジャマーキャンセラーに関係している。
シナリオ段階で、どんな実験が可能なのかを、ぬえ森田さんと話してきめた。
ただ、この段階では、森田さんにも明確にキャンセラーのビジョンはなかった。
プロフェッサーが、駄菓子の「ねるね」を食べている。
「なぜ、ねるねを?」
と戸田先生に聞いたら「気づいてくれましたか? わざとやってみました」
との返事。
よく理由は分からなかったが、まあ戸田版の雰囲気ということで了承。
以後も、同様の「ひっかかり」のあるアイテムが画面に出てくることとなる。
ラストシーンで、爆発の中に現れるレッドフレームは、
8が操縦している。
8の操縦は、オート(人を介さない)ということで、
世界観的な問題をはらむのだが、
「単純に歩いてきただけ」ということで、
サンライズのチェックをパスした。
※ときた版の1話でも、8がライフルを撃つシーンがある。
フルオートは問題だが、単純な作業なら、現代のテクノロジーでも簡単に出来る。
逆にコズミックイラの時代にそれが、出来ない方がおかしなことになる。
ただ、どこまでがよくて、どこまでダメなのかは、理屈ではなく、世界観の話になる。
ここの見極めを間違えると、読者が混乱することとなってしまう。
この話は、冒頭に書いたように、私の大のお気に入りだ。
だが、アンケートの順位はさんざんだった。
まあ、ロボットが活躍しないのだから、しょうがない。
(ときた版3話と同様の現象だ。作者の気持ちとアンケートは一致しない)
この話が少年エースに掲載された後、
ときた先生から「いい話でした」と言って頂けたのが、とてもうれしかった。