科学説明を無視してウソをつくか、
科学説明に忠実だが、説明は隠すか。
「SEED」で、両者が使われているのには、必然がある。
・その1 リアルとフィクション
一般的に物語を作るとき、それはエンターテーメントであり、フィクションなので、
リアリティは考慮したとしても、面白さを否定してまで、その点に固執しない。
いい例が、ガンダムのモビルスーツだ。
普通に考えれば、レーダーが使えないからと言って人型の巨大兵器が出現するとは思えない。
しかし、モビルスーツを否定したら、作品そのものの否定になる。
この点では、明らかなウソと分かってやっている。
ガンダムの場合は、だからと言って、リアリティの無いロボットを放置している訳でもない。
ミノフスキー粒子(もしくはNジャマー)、アンバック、これらの設定で、
「いても良いかも」という免罪符を与えている訳だ。
こうした科学設定のウソは、各所にある。
ぱっと思いつくのだと、ロンドがユニウスセブンの破片をオーブへの落下阻止のため、イズモをぶつけて阻止するのだが、これは科学的にはおかしい。
質量の違いを考えれば明らかだ。
だが、物語的に「あり」なので、これを否定する人はほとんどいない。
※修正しました。初公開時、「イズモ」とすべき所を「クサナギ」と書いてしまった。すまん。
・その2 挑戦
「SEED」では、さらに新たな試みとして、
明らかに読者の理解を超えた設定も、盛り込まれている。
ここで科学説明について触れても、分からないと思うので、
単純な現れとして、「単語」を取り上げよう。
普通、「単語」を選ぶ時、「なじみがある」「憶えやすい」などを考慮する。
だが、実際の世界の使われている言葉に、そんな考慮はない。
フィクションの世界だけが、そうした考慮が行われているのだ。
私も、「ビームを曲げるガンダム」の名前を、最初に聞いたときはびっくりした。
普通なら使われない単語だろう。
・その3 設定マニアの方へ
上記した挑戦に近いのだが、「SEED」では、別角度から面白い試みがされている。
たとえば「ミラージュコロイド・デテクター」。
ミラージュコロイドを使った物体の存在を関知するレーダーのようなものだ。
外伝では、かなり頻繁に登場しているが、
もともとは「デスティニー」の基本設定の中に含まれていたもの。
この設定は、「世界観が持つリアリティの要求」から産まれたものだと、私は理解している。
現実世界では、兵器用のステルス技術が、何年もの間、完全な状態で機能するハズがないのだ。
その技術が、脅威であるればあるほど、早く確実に破られる。
それがリアルというものだ。
そうした政治的、社会的要因をリアルに設定に盛り込むというのは、
地味だし、考慮している作品は少ないが、設定ファンには魅力的なものだと思う。
こんな設定もある。
NジャマーからNジャマーキャンセラーが産まれ、最後にはニュートロンスタンピーダーが作られた。
これらは、同一線上の技術の発展だが、同時に政治的な状況に合わせて技術進化していくリアリティが感じられないだろうか?
最後にもうひとつ。
Nジャマーキャンセラーについてだ。
おそらく物語上で、最初に登場するNジャマーキャンセラーは、ドレッドノートのモノだ。
劾が、この機体のテストで、戦う話が最初だと思う。
この時のNジャマーキャンセラーは、実は、その後に登場するものとは能力が違う。
(良く読めば分かる)
この時のものは、Nジャマーキャンセラーという言葉から想像される、わりとスタンダードな能力を持っている。
だが、その後、作られたものは、それと違う能力を有する。
なぜ違うのか?
それはNジャマーのもつ能力(複数ある)のうち、機体に組み込むにあたりザフトが、どれをキャンセルしたかったのかで分かる。
(逆に言えば、何をキャンセルしたくなかったのか)
さらに付け加えるなら、当時のザフトでは量子通信も実用レベルになっていた。
(これもドレッドノートの設定から読み取れる)
おそらく、ほとんどのファンは、こんな些細なことには興味がないと思う。
だが、確実にいる設定ファンには、こうした理由を考えることは楽しいのではないだろうか?
(私は好きだ)
設定ファンの方にひとつだけ、報告しておく。
今のところ、設定に訂正しなければならない大きな矛盾はない。
安心して、設定を推理し、深めてみて欲しい。
隠されている設定も、時間がたてば公開出来るのではないかと思う。
ただし、これは私の一存では出来ないので、ご了承を。