模型化が発表されたのを機会に
ゴールドフレームの誕生秘話を……。
・ゴールド誕生
最初に見せてもらったアストレイのカラー案の中から、
私が主人公として赤と青を選択したのは、電撃のインタビューで話したとおり。
その初期案の中には金色もあって、「これ、いいよね」とスタッフの中でも人気だった。
だが、金色は、主人公にするには派手すぎるし、模型化するには、
メッキが必要となりハードルが高い。
そこで、金色は、模型のことを考えなくてもよい敵として出すことにした。
・テレビの情報入手
テレビスタッフとの打ち合わせ中、ブリッツが物語の中盤で破壊されることを聞く。
「ぜひ、そのジャンクパーツをください!」
テレビとの連動が、この段階ではあまり決まっていなかった私は飛びついた。
ただ、機体そのものを使うのは、問題があるので、
腕一本をもらうこととした。
「オッケー」ということで、スタジオぬえの森田さんが
その回のシナリオも担当し、しっかり腕を切り落としてくれることになった。
・作画、問題発生(少しだけね)
さて、腕の確保が出来たので、ガンダムエース1話に登場するゴールドフレームは、
腕をへリオポリスに落としていってしまう。(1話では腕しか出てこない)
しかし、ここで問題発生。
当初の予定では、左腕を落とす予定だったのが、ときた先生が間違えて、右腕を描いてしまったのだ。
ご本人は、ペン入れの段階で「もしかして間違えたか?」と気が付いて連絡してきてくれた。
「それじゃ、右にしましょう」と私は即答。
実際この時は、どっちの手でもよかったので、急遽、落としたのは右腕という設定に変更、各所に通達しなおした。
・シナリオ完成
スタジオぬえ森田さんのシナリオには、「右腕を切り落としてから破壊。変更不可」の記述があり、実際、ここは変更されることなくアニメで描かれた。
・デザイン発注、問題発生(少しね)
ブリッツの腕を移植するだけでは、インパクトがないので、
同時に顔も変更することにした。
そこで、ビークラフト阿久津さんに新しい顔のデザイン発注することになった。
実は、アストレイでは、最初に敵やキャラなど、発注できる数に決まりがあった。
(予算の関係。これは連載期間が延長さると、その都度替わる)
ゴールドのパワーアップは予定に含まれてなかったので、
追加した少ない予算でデザインしてもらうことになった。
しかし、いざラフを受け取ってみると、
あの凄いデザインだった。
「ぜんぜん、手と顔だけじゃない!」
これを顔だけの安い予算でデザインしてもらうのは無理だ。
そこで、急遽、ラフボスとして取っておいた予算を使い、新ゴールドをラスボスにしようと考えた。
それをビークラフト阿久津さんに伝えると
「ラスボスは別にやりたいデザインがあるので、それはそれでやらせてくれ」
との返事。
その意見を尊重することにして、予算のやりくりをして、ラスボスとは別にデザインしてもらうことにした。
※もし、ラスボスを中止していたら、リジェネレイトが消えていた。
・色決め
デザインを進めてもらってる時(たしかまだラフも出ていない時)
ときた先生と電話で話していたら、
「今、模型誌をみているのだけど、黒い装甲はありかも」
という話が出た。
その時、ときた先生はテストショットで黒いプラで成形された何かの仮組キットを見ていた。
「たしかに」
ということで、ブリッツの腕を移植されたゴールドフレームは、
金のフレームに黒い装甲になることとなった。
・物語的対応策
当初、腕と頭だけ変えるつもりだったのに、凄いデザインになってしまったゴールド。
このまま再登場すると、同じ機体だと分からない。
そこで、コミックの方では、未完成形態でも登場させることとなった。
(腕はブリッツのまま、頭部は新しいものになっている)
ギガフロート戦に登場。
(MSV的には、第三次ビクトリア攻防戦にもこの状態で参加している)
これはこれで格好良くて、けっこう人気があるようだ。
模型を改造したものもネットで何体か見かけた。
※これはこちらも狙っていた。
模型で作れる改造機というのもテーマだった。
・設定完成、問題発生(少しね)
設定がアップした。
だが、足など本来破壊されていない部分にも改造が加わっていた。
その上、足のアーマーにブリッツのデザインラインが見られ、
サンライズから「ここは元のアストレイにしたい」とのオーダーがあった。
そこで、デザインを元のバージョンに戻してもらって完成としたのが、
ゴールドフレーム天だ。
名前は、私が「オーブは日本語(古代語)」という観点から付けた。
サンライズでは、漢字の名前に多少抵抗があったようで、
「正式名称ではなく、パイロットが勝手に呼んでいるのならオッケー」という返事だった。
いまでは「暁」もいるので、違和感なくなったが、このあたりの用心深さは、商売で物作りをするのにはかかせない部分だと思う。
・天ミナ
ゴールフレームのパイロットであるロンドは、
当初からギナが死に、ミナにバトンタッチする予定だった。
そこで、ミナになった時にゴールドフレームもパワーアップしたいと考え、
一部の追加武装を初期段階では出さないこととした。
腕に付くツムハノタチと腰のトツカノツルギがそれだ。
復活させるにあたり、デザインを見直していたら、
一旦中止になった足は、ハイヒールのようで、
女性パイロットには合うかもしれないと思うようになった。
そこで、サンライズに相談したところ、
中止となったデザインを復活させても良いという話になった。
こうして、ミナが乗る機体は「天ミナ」として、
足も改良された機体として登場する。
※長くなったので、模型化への道は、また明日に続く!