スニーカー3話

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風花が、主人公となる話。 それまで、三人称で進めてきたが、これは一人称で書かれている。 文庫のあとがきにも書いたが、 「風花って、どんな子?」 という問い合わせに答えると同時に、 「女の子の目を通してサーペントテールのメンバーを描いたら、少し変わったモノが書けるかも?」 という2つのテーマがあった。 書いていて大事にしたのは、風花という少女の考え方。 変わっている(子供らしくない)けど、しっかりキャラを確立していること。 それだけを考えた。 私は、子供はみんな変わり者だと思う。 社会の型にはめられていないからだ。 知り合いなどに子供の時の話をきくと、(本人に「変わっていた」という自覚が無くても)大抵、変わったエピソードが聞ける。 風花には、そんな話をふんだんに盛り込んでいる。 その甲斐があってか、「風花に共感した」と言ってくれる人は多い。 個人的にお気に入りなのは、ブルーフレームに乗った風花が、急激なGで吐きそうになった時、「前の食事で何を食べたか?」「みっともないゲロを吐きたくない」と思うところだ。 実は、これには多少フィクションも参考として入っている。 永井豪先生の「いやはや南友」という作品で、こややし少年が拷問(正確には、保健の成績を決める競技)にあっている時、ゲロを吐く。 これがタクアンのしっぽで、すごく恥ずかしいというギャグがある。 この時、私は笑うより恐怖した。 吐くだけでも恥ずかしいのに、その上、ゲロの内容でまで恥はかきたくない。 そう思ったのだ。 その経験が、このシーンに生かされることになった。 もう一つ。 「がんばる」という風花に、劾が「がんばらなくていい、いつもどおりやれ」 というシーンがある。 これは、その当時、あまりに無責任に「がんばって」という言葉が横行し、 私には「無理してでもやれ」と聞こえていたことへの反発だ。 劾は、風花を信じている。だから風花に背伸びさせない。 ありのままで出来ると信じているのだ。 風花は、書いていて、おもしろかった(同時に苦労した)し、筆か勝手に進むほど自由に動いてくれた。 だが、彼女を生かす物語がなかなか作れなかった。 風花が「みんなの窮地を救う話」という基本は決めていたが、 それが可能となる事件が思いつかなかったのだ。 結局、締め切りを少しすぎた日の夜に、ときた先生に電話して相談した。 先生からは、子供たちを乗せた宇宙船がハイジャックされる話など、ご提案いただいた。 結局、いただいた案自体は、書くと長くなるため(段取りが必要)、 採用しなかったが、この時にときた先生と話したことは、 かなり作品に生かされている。 ときた先生は電話の中で、劾という人物について 「話すこと、行動、そのすべてに間違いがない。そう思える人」 と表現された。 それまで意識したことはなかったが、これを聞いて「たしかにそうだ」と感じた。 これは、この3話の背骨となる部分で、 自分の価値を探す風花を認める者として、劾が生きてくることになった。 原稿をアップした後にも、ときた先生の所に送り、チェックしていただいた。 この時には、ぜひ女性の意見も聞きたかったので、奥様にも見てもらった。 「風花、かわいいと思います」という意見をもらい、かなり安堵したのを憶えている。 (さらに、こちらが見過ごしていたミスをいろいろと指摘して頂いた) ※女性では、私の妻にも見てもらった。 余談になるが、この作品は、入校後、担当から電話がはいって 「おもしろかったです」 と言われた唯一の作品でもある。 この原稿は、入稿後にも、印刷されるまでに少し修正している。 「劾が、なぜ風花を信じるのか?」 という部分で「ロレッタの娘だから、その血(才能)を引いているから信じている」 という部分を否定する文章を追加している。 あくまでも、劾は、風花個人を信じているのだ。 それと、大気圏ギリギリで行われているドラマであることを、 もっと強調するように編集部に指摘され、その部分も修正している。 余談 今回読み返してみて、「SFって難しい」と思ったことがある。 実は風花が音楽のディスクについて触れる部分がある。 当時、書くときには「CDはなくなっていも、やはりディスクを使ってるだろう」と思って、そのようにした。 だが、あれから数年。もう時代は「音楽はネットワークで、小型再生機にダウンロードする」時代になってしまった。 (まだディスクが絶滅した訳ではないが、この流れは逆行することはなさそうだ) まさか、シリーズが終わる前に、現実に追い抜かれるとは……。

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このページは、千葉智宏が2006年4月15日 21:31に書いたブログ記事です。

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