作品の各話を解説するコーナー。その1です。
今のところ、全話やるつもりですが、かなりの話数なので、途中でやめてしまうかも。
この1話、シナリオを書いた時点で、50ページ近くなることが分かってました。
私は個人的に「漫画は1話40ページまで」という決まりを作ってます。
たくさんページがあっても、読者が途中で、だれて(飽きて)きてしまうからです。
飽きさせないために、内容を盛りだくさんにすると、今度は読んでいて疲れてしまいます。
そのバランスが取れているのが、30〜40ページという訳です。
この1話のシナリオは、シリーズの中で一番最初に書いたものなので、
シナリオ状態でサンライズにチェックしてもらいました。
(現在はシナリオチェックの必要はなくなり、コマ割したネームをチェックしてもらってます)
その段階で、「結構なページ数になりそうだ」と、お話ししました。
するとサンライズからは「何ページでも大丈夫だよ」という返事。
新作ガンダムの外伝である本作の期待度は高く、雑誌としても、
一番よいと思われるページ数を確保してくれるというのです。
「では、ときた先生と検討してみます」
と、その場ではページ数を保留。
まずは、そのままのシナリオをときた先生に渡してネームを切ってもらいました。
数日後、ネームが出来たという連絡をもらったのてすが、見てびっくり。
あの内容すべてが36ページに収まっているのです。
実際のネームに目を通してみると、かなり圧縮された内容になってました。
これは、長くときた先生がボンボンでテレビ4話分を漫画1話に納めるために培われた技術が発揮されたネームでしたが、読んでみて、感じたことは「今回はこれではない、違う」ということでした。
そこで、急遽、編集担当と私でときた先生の所におじゃまして、最初のページからネームについて細かい打ち合わせをすることになりました。
まずお願いしたのは、
「アストレイはアニメの漫画化ではないので、そのものが本物のガンダム作品になるようにしましょう」ということです。
ココでは、細部について言いませんが、一例を挙げるなら、最初のシーン。
崩壊したへリオポリスにロウたちのキメラが侵入するシーンですが、シナリオでは数行しかありません。
最初のネームでは、シーンごとなかったか、あっても1コマだったように記憶してます。
(こういった物語に関係ない、段取りのシーンは、通常、カットされる一番の対象になります)
ですが、ここは新作の冒頭として「どきどき」する間(ま)が必要でした。
そこで、ファーストの1話のサイド7に潜入するザクのようなシーンにしてもらいました。
(これぞ、ありがたい先人の知恵です)
終電がなくなるギリギリまで打ち合わせし、再度ネームを出してもらいました。
(実際には終電に間に合わず、タクシーで帰りました)
そうして、誕生したのが、あの1話です。
ページはモノクロだけで48ページとなりました。
ときた先生のボンボンでの作品と比べると、その構成のスタンスがまったく違うことに気づかれると思います。
さすがときた先生はプロです。こちらの希望を正確に読み取ってくれました。
1話について、その他気をつけたのは、とにかくキャラの個性を押し出すことです。
たとえば、へリオポリス内で、ロウは空気があるか確認もせずにマシンを降りてしまいます(無茶)。樹里は、ロウが降りたので、降ります(ロウを信頼)。ところが、リーアムはそれでも降りません(現実主義)。
主人公のロウを一番生かすセリフは、
アストレイを破壊すると言う劾に向かって
「おまえには渡せない。破壊するなんて、もったいなくてな!」
という所です。
このセリフを聞いた劾は、ロウに対して、仕事以外の興味を覚えます。
そして、人として接するためヘルメットを脱ぐのです。
本当は傭兵チームも全員出す予定でしたが、そこまでは行かなかったので、イライジャに「ロレッタ」という名前を口にさせて、「他にもメンバーがいるよ」ということを示してます。
(余談ながら、この回だけ、イライジャが「ボク」と言ってます。
シナリオがそうなっていたからですが、作画を見たら、予想より「へたれ」だったので、そのまま「ボク」だと、よけいヘタレると思い、以後は「オレ」にしました)
この時、ホームに残ったプロフェッサーと、イライジャの二人。
ときた先生との打ち合わせで、二人がラブラブになる展開も考えてましたが、結局やめてしまいました。
うろ覚えですが、ときた先生のと所にいらっしゃる女性アシスタントに反対されたんじゃなかったかな?
最後にロウの言う「死んだ爺ちゃんが、よく言ってたぜ」は、
当初、ロウの口癖にするつもりでしたが、
「他人の意見ではなく、自分の意見で行動するキャラ」になったため、
使わなくなりました。
※仮面ライダーカブトも同じようなセリフ言いますが、キャラと合っていないような……。今後なくなるかもしれませんね。
この1話では、どうしても直したいコマがあって、
ときた先生に単行本収録時に描き直してもらいました。
事件が解決し、ホームに集まったメンバーのシーン。
ホームに傭兵たちのモビルスーツも降り立っているのですが、
修正版では、これがホームのクレーンでモビルスーツをつかむ形になってます。
こういう細かいメカ描写は大切にしたいと思い、修正してもらったのです。
本当は雑誌掲載前に気づけば、先生にも負担がかからないのてすが、
なかなか、うまくはいきません。