業界人の特権?「モノをもらう」

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業界にいると、地位(あるのか?)や名誉(ヒットすれば)の他にも、 特権があると思われている。 普通の人が思うのは、 「モノがもらえる」 「有名人に会える」 の2つではないだろうか? 新入社員も、この辺が気になるようで、よく質問してくる。 だが、私はこれらが嫌いだ。 ちゃんと理由がある。 まず今回は「モノがもらえる」の話からしよう。 当然ながら、自分でやった仕事の関係なら、商品見本をもらえる。 (その権利もある) だが、実際には、もらえないことも多い。 さすがに自分の著書などは、見本誌がもらえないことはほとんど無いが、 関連グッズなどになると、もらえることの方が少なくなる。 それも仕方ないことで、 人気作品に係わったとすると、商品がすごい数になる。 係わったスタッフの人数もかなりの数なので、 とてもではないが全員に配ることなど、現実問題として不可能なのだ。 (数をそろえるのが問題ではなく、商品ごとに配る先を把握するのが難しい) このことに対し怒る人もいる。 その怒りは、当然の権利だと思う。 だが、私は怒らないし、催促もしない。 なぜなら、版権元には、商品の分配に力を注ぐより、 もっと別にやってほしい仕事が山のようにあるからだ。 商品をもらうために「やってほしい仕事」が後回しになるのは、 本末転倒と言えるだろう。 これとは別に たまに「仕事をしてないモノ」が、もらえることもある。 たとえばガンダムエースで連載していれば角川書店の別の雑誌を もらえたりするのだ。 ※まったく無関係ではダメだが、「仕事に役立ちそう」ならもらえる。 業界には、これに命をかけている(ように見える)人がいる。 私だって、タダでモノがもらえればうれしい。 だから、その人の気持ちは十分理解出来る。 しかし、催促するようになってはダメだろう。 (それは物乞いと一緒ではないだろうか?) 私は、絶対に催促しない。 まあ、毎月送ってくれる雑誌が来なかったりすると、 「どうなりましたか?」と、聞いてみたくなったりしますけどね。 個人的に自分のお金で買えるモノは、自分で買う。 それが、私のポリシーだ。 最近では、自分で書いた掲載誌も、送られてくるのを待つのがいやで、 本屋で買ってしまう。 (見本誌は、意外と届くのが遅いモノが多い。 あるアニメ誌なんか、発売から二週間ぐらいかかってる。 まあ、これは例外中の例外かもしれないが) これに関係した事件をひとつ紹介しよう。 私と共同作業していた絵描きさんが、担当編集者を通して、 「作品の関連グッズをもらって欲しい」と連絡してきた。 これだけなら、それほど珍しい話ではない。 だが、間に入った編集さん曰く「もらってくれないと仕事しない」 と、言ってるらしいのだ。 この件は、二つの点で私の怒りをかった。 1つは、「仕事をしない」という点。 この人は、自分の仕事をなんだと思っているのだろうか? もし、そんなことで仕事を降りたら二度と仕事をもらえないだろう。 そして、作品を楽しみにしている読者を、そんなに簡単に裏切っていいのか? その人の作品を高く評価していた私は、すごく悲しい気分になった。 もう1つの怒りは、編集者に対してだ。 編集者なら、そうした作家の態度を戒めるべきだろう。 それでも商品を手に入れて上げたいと思うのなら、 なぜ自分で版元に連絡して手に入れようとしないのか? なぜ、同じ作家という立場である私に依頼する? 筋違いも、はなはだしい。 この編集者は、あきらかに「簡単な方法」を選択したのだ。 (作家の気分をよくするのも編集者の仕事だ。 モノでつるのも、ひとつの方法であり、それを否定する気はない。 だが、自分で努力せずに結果だけ得ようとするのは間違ってる) 編集者を通して、絵描きさんへは 「そんな理由で、仕事を降りるならどうぞ。 こちらからお断りです」と伝えてもらった。 ※本当に伝えたかどうかは、不明だ。 結局、その絵描きさんとの仕事は、続いている。 その後、編集者から「今回は自分の対応が間違っていたが、 どうしても、その商品を渡してあげたいので、なんとかならないか?」 と言われた。 ここで無視してしまうと、大人の仕事は成り立たない。 理屈には反するが、私が商品を手に入れることにした。 しかし、この商品は、私も持っていなかった。 そして、上記したように版元の手を煩わせることはしたくなかった。 またやっかいなことに商品は「クレーンゲームの景品」だったので、 版元以外から手に入れる手段は少なかった。 最終的に、私は、その商品を「まんだらけ」で購入し、 絵描きさんへプレゼントすることになった。 ・自分へのメモ 文化祭の話

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このページは、千葉智宏が2006年3月11日 22:28に書いたブログ記事です。

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