時間を売るか、結果を売るか?

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この業界は、容易には入れません。 人材を欲している所は、多いのですがね〜。 なかなか仕事として成立するのが難しい業界なのですよ。 そのため、「入る夢を持つ浪人」という人は多いと思います。 「今はバイトをして食いつないでるけど、いずれは大作家になってる!」 という夢を持った人たちですね。 そういう人たちなら、大丈夫だと思うのですが、 仕事のことを「時間を売ってお金にする」という感覚を持っては、ダメです。 バイトを長く続けていると 「時間」=「お金」 という感覚が、どうしても芽生えてくると思います。 ですが、これだと、プロレベルの仕事になりません。 なぜなら、前に書いたとおり、業界の仕事は生活そのものが仕事です。 そこに「時間給」の概念は存在していないのです。 もちろん、この業界にだってバイトはいますし、 時間給だって存在してます。 これらの例外は、単なるお手伝いや、修行期間、 もしくは雇い主との信頼関係が成立したことにより、時間払いしている。 などがありえるでしょう。 オルフェでもバイトを雇うことがあります。 過去には、ゲーム製作のデバッグのために大量にバイトを雇ったことがありました。 この時、バイトは全員時間給でしたが、「時間」=「お金」の感覚の人と、 そうでない人の間には、仕事の出来にかなりの差がありましたね。 「時間」=「お金」という人は、監視の人がいないと、隠れて雑誌を読んでさぼったりします。 彼らは、自分の時間を売っているので、時間さえ拘束されれば、その間は何をしていても、罪悪感が薄いのです。 時間にとらわれない人は、作業による結果を出そうとしてくれます。 実は、お金を出す方は、この「結果」を買いたいのです。 結果を重視する人は、作業のための話もよく聞きますし(そうしないと結果が出せませんから)、より効率化した作業をしようとします。 時間を売ってる人にとって、効率は関係ないので、だらだら仕事をします。 ここで明らかな差が出ます。 オルフェでは、どんな社員も最初はバイトとして雇います。 最低3ヶ月、長いと1年ぐらいバイトとして使って、適正を見ます。 どんな仕事でもそうだと思いますが、最初からすべて出来る人はいません。 「修行」「研修」と呼ぶような期間がどうしても必要になります。 この期間は、結果も出しにくく、雇う側にとっては「赤字覚悟」の雇用です。 この期間をどこまで短く出来るかは、雇用主にとって切実な問題です。 上記したように、バイト感覚の人は、いつまでたってもこの期間が終わりません。 当然、正式採用となる前に業界を去ることになるのです。 蛇足 今の話には、ひとりだけ例外がいます。 当社で修行して、今、シナリオライターをしているAくんです。 彼は、かならず定時に帰る男でした。 しかも、興味がないない分野の仕事を頼むと、まったく成果が上がりませんでした。 とにかくダラダラ時間だけを浪費するのです。 RPGのテストプレイを頼んだら、レベルアップ作業をせずに、 ひたすら全滅だけを一日繰り返してました。 ゲームに興味のない彼にとっては、「テストプレイ」とは、 ただ指定された時間、プレイすればよいと思っていたようです。 「それじゃ、ダメだ」と言っても、ゲームのおもしろさを理解出来てない彼には、 何がダメなのかも分からないようでしたね。 こんなAくんでしたが、好きな分野の作品のシナリオ作成の腕はありました。 そこで、彼には、独立してもらいました。 現在も、業界で働いてます。 ですが、私は彼と一緒に仕事をする気は、ありません。 なにせ興味がないものには、まったく反応がないので、 打ち合わせが成立しないのですよ、彼とは。 ある日などは…… 私「そこはジョジョのパターンで行こう!」 Aくん「なんですか? 僕、漫画読まないんですよ」 別の日は…… 私「それはZでやったからダメだろう」 Aくん「そうなんですか? 僕ファースト以外、見てないんです」 こんな調子でしたから……。 たとえ興味がなくても、「おもしろい」と思う心がなければ、 自分の好きな分野での応用もなくなっていくと思うのですがね〜。 それにしても、どうして彼が、未だに業界で仕事を続けてられているのか、私には不思議でなりません。 すくなくても、オルフェでは、 どんな分野にも興味を持てる、そして、熱中できる。 それ故に、時間を気にせず働ける。 そんな人材が欲しいですね〜。 以下、今後書きたいと思うテーマのメモです。 ・私の修業時代 ・業界を去った人々 ・専門学校について ・新人賞の審査 ・シナリオライターと漫画家の関係 ・編集者と作家 ・データ流失(モラルの話) ・採用時に重視すること

このブログ記事について

このページは、千葉智宏が2006年3月 8日 00:04に書いたブログ記事です。

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